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[内分泌かく乱(環境ホルモン)]

・デブラ・デイビス(カーネギーメロン大客員教授(米)−環境ホルモンのサイン見逃すな(H16.4.14 朝日)
環境ホルモンの悪影響を調べるのは難しい。作用がタイミングに左右されることがある。発生のある段階にさらされたときにだけ異常が現れ、成長後にさらされてもなんの異常もない可能性がある。
敏感な時期は短く、化学物質が働く仕組みも複雑だ。疫学調査も難しい。たとえば乳がんの9割は化学物質や食生活などの環境因子が絡んで発病する。特定の化学物質との関係を突き止めるのは容易ではない。全米科学アカデミー(NAS)にいた時、ある化学物質に発がん性があると分かり発表したが、上司は「活字にするな」と命じてきた。指示に従う研究者もいるのではないか。NASは1983年化学物質の安全性を確かめる必要性を認めたが事態は進展していない。だが、心強い動きが国民や州政府レベルで出ている。また、ミナマタの例でわかる通り公害が起きると長く負債を返さなければならないので、未然に防ぐ方が安上がりだ。

Pマガジン編集子の一言コメント付きマーク <Pマガジン編集子の一言>
研究の成果は広く公表することが大事で、発表が制限されることは絶対に避けねばならないことです。研究者は、研究結果が事実か、間違っていないかを慎重に検証してから発表し、間違っていた場合は直ぐに訂正を発表することも大事であると思います。正しい情報の発信こそが環境ホルモン問題の正しい対応につながると思います。このことは、メディアや企業、行政等全てに同じことが言えると思います。

・環境ホルモン危険訴え-ティオ・コルボーン博士が学生や市民に講演(H16.4.21 読売、毎日他)
環境ホルモン(内分泌攪乱物質)の危険性を訴えたベストセラー「奪われし未来」で知られるWWF・US(世界自然保護基金-米国)の科学顧問ティオ・コルボーン博士が岡山市で学生や市民に講演した。
博士は、環境ホルモンが微量でも影響が大きいことなどを野生生物の奇形などを例に説明した。さらに、「化学者には生態システムの知識が必要である。予防のために環境科学や医学を築く必要がある。また、胎児の体内から化学物質を取り除くことが世界の平和につながる」と訴えた。

Pマガジン編集子の一言コメント付きマーク <Pマガジン編集子の一言>
「奪われし未来」は、科学読み物(Scientific fiction)として環境ホルモン問題を提起し、多くの研究活動を喚起したことで多くのことが分かってきました。しかし、一方では、読み物と科学的事実が混同された結果、化学物質が環境ホルモンそのものであるような誤解を与えてしまった面もあると思います。

・女性のオシッコ垂れ流しで東京湾の魚が総メス化?(H16.05.11Weeklyプレイボーイ)
いずれ東京湾から魚がいなくなるなんてことになるかもしれない。そのキーワードは魚のメス化だ。
魚類のメス化は、1998年に話題になって以来、「環境ホルモン」が原因だとして一般に知られてきましたが、今回、東京都が調査した結果、主な原因物質は女性ホルモン「エストロゲン」だったことがわかったのです。東京湾の河口付近や運河に生息するボラ、コノシロ等の生殖腺を調べた結果、オスから卵母細胞やメス特有の「ビデロジェニン」が検出された。いずれも下水処理場の放流口で採取されたもので、その海域の女性ホルモン濃度が沖合の4倍にも上ることなどから、魚のメス化は、下水から出るし尿に含まれた女性ホルモンの影響が強いのではと考えられます。(東京都)
今回の調査に当った和波主任(東京都環境科学研究所)は、
・メス化は他の魚類にも波及する?−必ずしもそうとはいえない。肉食性の魚がメス化したケースは確認されていない。 ・女性の尿によるホルモンが原因だけに対処が難しいのでは?−汚水処理能力を引き上げれば大丈夫  ・メス化した魚を食べた人間に影響がでることは?−魚だけでなく、牛乳や豆腐にも女性ホルモンは含まれています。それらを食べても胃や腸から吸収されることはありません。
食物連鎖で人間の男性が女性になる心配はないが、「エストロゲン」は女性なら誰でも持っているホルモンだけに、PCBやダイオキシンなどの環境ホルモンと違って法的な規制が難しい。さらに、女性ホルモンは、環境ホルモンよりはるかに効き目が強い。エストロゲンによって魚のメス化がどこまで広がるのか、先が見えないだけに底知れぬ怖さはぬぐえない。

Pマガジン編集子の一言コメント付きマーク <Pマガジン編集子の一言>
人工の化学物質の影響が強調される中、魚のメス化に女性ホルモンが影響していることは、英国の川での魚のメス化の例が知られていますし、今回、日本でも同様のことが確認されました。東京都が考えているような下水処理場の能力が上れば、このような恐れは改善されると思います。

[環境]

・有害化学物質の総量規制-排出登録制度に一定の成果(H16.4.19 毎日)
化学物質排出管理促進法(PRTR法)(注1)に基づき、2002年度(平成15年度)に工場などから大気や河川に出された有害化学物質の排出総量がまとまった。全国3万5千の事業所が国に届け出た排出量は約29万トンで、前年度比約7%減であった。環境省は「企業の自主努力の成果が出た」と話す。しかし、一部の発がん性物質(注2)の排出・移動は増えた。制度の開始から1年。集まったデータを生かし、行政と企業、住民が協力し合いながら化学物質の削減を図る取り組みは進んだだろうか。

<編集子注>
注1)PRTR法: Pollutant Release and Transfer Register
注2)増加した発がん性物質:ヒ素、カドミウムとその化合物、6価クロム、ニッケル化合物
注3)集計結果(環境省ホームページ):http://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html