[内分泌かく乱(環境ホルモン)]
・環境省−内分泌かく乱作用に関する試験結果報告
・試験結果のまとめ<編集子>
ビスフェノールAについての試験結果をまとめると次の通りです。
・ほ乳類(ラット)の試験で、人が暴露される程度の低用量においては、明確な内分泌かく乱作用は認められなかった。
・魚類(メダカ)に対して高濃度での内分泌かく乱作用を有することが推察された。
しかし、水環境中の濃度は、今回の試験で得られた無影響濃度より低いので、現実的なリスクは低いと考えられる。
今回の試験結果から、人に対しても実際の水環境においても、内分泌かく乱作用は心配はないと考えます。
今回の試験結果について、各紙がどのように伝えているかを知って頂くために主要の記事を掲載しました。
・ビスフェノールAはラットに影響なし、魚類へのリスクも低水準 (H16.7.28 化工日)
環境省は、内分泌かく乱作用が疑われる化学物質のうち、平成13年度及び15年度に選定された化学物質としてビスフェノールAとDDT類、ヘキサクロロベンゼン、β−ヘキサクロロヘキサンなどの5物質の動物試験結果を公表した。
ビスフェノールAについては、ほ乳類(ラット)を用いた試験結果では、低用量での明らかな内分泌かく乱作用は認められなかった。
魚類(メダカ)を用いたフルライフサイクル試験で、肝臓中のビデロジェニン濃度及び精巣卵出現率に統計学的に有意な値が確認された結果から、魚類に対する内分泌かく乱作用を有すると推察した。しかし、水環境中で観察されたビスフェノールAの濃度は、今回の試験結果から得られた無影響濃度を下回っていることから、現実的なリスクは低いとしている。
従来データ裏付け−BPA安全性5社研究会の見解
ビスフェノールA安全性5社研究会は発表内容に関して、従来の研究結果と同様の内容であるとする見解を明らかにした。
(参考)BPA安全性5社研究会のホームページ<http://www.bisphenol-a.gr.jp/frame2.html>
・環境省の評価結果発表に関する当研究会の見解
・ビスフェノールAに関する報道発表について
[ラット試験結果について]
これまで国内外で実施されてきたラットによる内分泌かく乱作用に関する研究では、ヒトが摂取する可能性がある低用量の範囲では有害な影響は観察されていないが、今回の報告はこれまでの結果を裏付けたことになる。
[メダカの試験結果について]
昨年、環境省はメダカのパーシャルライフ試験(1世代約70日間)についておよそ400μg/L以上の濃度でオスのメス化を示唆する影響が観察されたと報告した。今回はさらに試験期間を長く(約180日間)して、仔の世代への影響を含めて試験した。今回の結果は、200μg/L以上の濃度で影響があるとなっているが、昨年の結果を大きく変えるものではない。
昨年の発表の際に、当研究会は独自に実際の環境中濃度との比較を行い、有害な影響が起こりうるのは環境中で検出される濃度の数百倍なので、環境中の魚に影響を与えることは考えにくいという見解を示した。
今回の環境省の発表でも、「環境モニタリングの結果から得られた“環境中の推定濃度は、前回及び今回の試験から得られた影響がないとされる濃度”よりも85〜160倍も低く、現実的リスクは低い」とまとめており、当研究会の見解と同様の結論である。
・ビスフェノールA−ほ乳類に影響なし、メダカはメス化 (H16.7.26 日本経済)
ビスフェノールAは、生殖機能への明らかな影響はなかったが、魚類では影響が認められたとする評価結果をまとめた。
ネズミ(ラット)とメダカにビスフェノールAを環境中に存在する低濃度から500倍程度まで混ぜた水を与えた。ネズミは生まれてから死ぬまで観察した結果、生殖機能などに影響はなかった。
メダカでは、低濃度でオスの肝臓中に女性ホルモンが増加し、500倍程度の高濃度の場合にはオスの精巣中に卵母細胞が出現するなどの現象が見られた。
・ビスフェノールAに環境ホルモン作用 (H16.7.28 毎日)
食器などに使われるポリカーボネート樹脂原料「ビスフェノールA」に環境ホルモン(内分泌かく乱作用)があることを、環境省がメダカを使った実験で初めて確かめた。一方ラットの実験では、環境ホルモン作用は認められず、「人間への影響はほとんど考えられない」としている。
・環境ホルモンを確認 (H16.7.27 朝日)
環境省は、透明なプラスチック容器などに使われる化学物質「ビスフェノールA」に魚類をメス化する内分泌かく乱作用があることが動物実見で確認されたと発表した。同省は人への影響は認められないとしている。
・環境ホルモン作用食器原料にもー人間の被害の可能性は低い (H16.7.23 読売)
環境省は、食器などに使われるポリカーボネート樹脂原料「ビスフェノールA」に魚類の生殖機能などに影響を与える環境ホルモン作用(内分泌かく乱作用)があるとする試験結果をまとめた。
メダカを使った今回の試験では、河川などで検出される低濃度のビスフェノールAでも、繁殖期のメスに特徴的なたんぱく質がオスでも増えることが判明。濃度を増すと、オスの精巣の一部に卵巣の細胞が交じる「メス化現象」も見られた。ただし、人間への影響を評価するために、ネズミ(ラット)を使った実験では、明らかな内分泌かく乱作用は認められなかった。同省は、「人間への健康被害の可能性は極めて低くなった」としている。
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